間違ってこの世に生まれてしまったのかもしれない

とにかく明るい詩を歌うしかない

机上

まっすぐにしか進めないミニカーは、机の真ん中から、

崖に向かって走って行く。崖っていうのは比喩なんだけど、でもそう見える。

映画で見たブレーキが効かなくなった車みたいで、可愛いそうだから落ちないように、向きを変えてやる。それでも止まらないから、また反対に向けて、今度は90度回転させて、また180度回転させて、ずっと机の真ん中あたりをうろうろしてる。

 

そうするとそいつはそこから何処へも行けない。

 

それが、君の人生だ。

 

そこから見える景色しか知らない。

ずっと机の真ん中ほんの一部をぐるぐる一生懸命走って、意味もなく同じところを行ったり来たり走り続けて。

机の角も、机の外に別の何かがあるなんて、地面や花やがあることも知らないんだろう。

 

嘘だ、君の人生じゃなくて、君と私の人生だ。

 

 

分かっている。

向きを変えてくれる人は、きっと優しい人だろう。

それを自己満足と呼ぶなんて、あまりに、残酷だろう。

だから、やっぱりそれは優しさで、愛情なんだろう。

 

だがそれでも、優しさだと分かっていても、私たちは崖に向かわなければならないんだ。

その下に、その向こうに何があるのかを確かめなければならない。

確かめずに、いつか机の真ん中で止まってそれで終わりなら、落ちてひっくり返って回っていたって、おんなじじゃないか。

 

何度向きを変えられても、それ以上のスピードで走らなければ。崖から飛び降りてみたいんだ。

ありがとう、ごめんよ、でも許してくれなくていいんだ。

走らなければ。